金策冒険家エイジのblog

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絶滅と引き換えに胎盤を獲得した哺乳類 - NHKスペシャル「女と男(3) 」を観て(2)

Wednesday, 28, 2009 at 14:02
Y染色体がなくなって、やがて絶滅の危機に瀕する。
それはすべての動物に共通する運命なのか?

マンハッタンビル群
この繁栄も胎盤を獲得したおかげ


実はそうではない。

滅亡の方程式を打ち破ったコモドオオトカゲ


雄がいないと子供が作れない。
そのため絶滅する。
いわば滅亡の方程式。

これを打ち破った動物がイギリスにいる。
イギリス中西部にあるチェスター動物園。
子供たちの人気者になっているのがコモドオオトカゲのフローラ(♀)。
絶滅が危惧される世界最大の爬虫類。

2年前(2006年)、フローラは世間をアッと驚かせた。
そのときの新聞(THE INDEPENDENT)の見出し「Behold,the virgin birth (and yes,it's a son)」。
the virgin birth」とは処女懐胎のこと。

フローラは雄との性交渉なしに、子供を産んだ。
大型動物が雌だけで子孫を残せるとは、これまでの常識ではあり得ないとされていた。
フローラが産んだ卵の内、7個が孵り、今も元気に成長している。

人間もコモドオオトカゲのように雌だけで子供を作ることができれば、たとえ男が消えても、絶滅は避けられる。
しかし、そうはいかない。
卵を産まない哺乳類は雌だけでは子供を作ることができない。
一体なぜか?
その秘密は体内で赤ちゃんが育つ仕組みにある。


哺乳類であるが故に絶滅する


新たな命を生み出す受精。
哺乳類の受精卵は子宮の壁に着床。
そこで胎盤が作られていく。
胎盤は母親から赤ちゃんに栄養や酸素を送り届ける大切な役割を果たしている。
この胎盤があるから赤ちゃんは育つことができる。

実はこの胎盤にこそ、哺乳類が雌だけでは子供を作れない理由がある。

胎盤は精子に含まれる遺伝子の命令で作られる。
つまり、雄がいないと、胎盤は作られない

男を作る染色体(Y染色体)がなくなれば絶滅するかもしれない、というのは哺乳類特有の問題なのだ。


なぜ胎盤は生まれた


雌だけで子供が作れるのか、作れないのか?

それは子供を卵で産むか、胎盤を使うか、その違いにあったようだ。
それでは一体なぜ、哺乳類だけが胎盤を持ったのか?

その答えを知るために、Y染色体が誕生した1億年以上前に遡ってみる。
ジュラ紀と呼ばれる時代、地上を支配していたのは巨大な恐竜たちだった。
この頃の哺乳類は体長15cmほどの、ネズミのような姿をした小さな生き物だった。
当時の哺乳類は圧倒的な繁栄を遂げていた恐竜の影でおびえながら暮らしていた。

ジャンガリアンハムスター


こうした過酷な状況の中で生き延びる武器となったのが胎盤。
それまでの動物は卵を産む方法を使っていた。
しかし、その方法は、多くの危険を伴うものでもあった。

もしも産み落とした卵に敵がやってきたら?
もしも大雨に襲われたら?

命をつなぐことはできない。
常に危険と隣り合わせだったこの時代、自分の子供をお腹に抱え、行動を共にできる胎盤の仕組みはこれまでにない画期的なものだった。

さらに、胎盤にはもう1つ、卵にないメリットがあった。

卵に含まれる養分だけでは、さほど大きく育つことはできません。それに対し、胎盤があれば、胎児の成長段階に合わせ、その都度必要な栄養を与えることができます。これは大きなメリットだったと考えられます」とグレーブス博士。


絶滅の運命背負った胎盤の獲得


ところが、胎盤を獲得したことは同時に絶滅の危険を引き受けることにもなった。
胎盤はY染色体を持つ雄がいないと作られないためだ。

Y染色体によって性を決めるシステムは1億6,600万年前頃にできたと考えられている。
それまで普通のペアだった2本の染色体の片方に、男性になることを決めるSRYと呼ばれる遺伝子が獲得された。

さらに、精子を作る遺伝子も獲得。
こうして片方だけが男性を決める役割を担う特別なY染色体になった。

性染色体XとY
性染色体XとY


この仕組みによって雄と雌の数を確率的に半分にできるというメリットも生まれた。
父親の持つ2本の内、Y染色体を受け継げば雄。
X染色体を受け継げば雌となるため。

ただしX染色体とは違う存在となったY染色体は、もはやペアと交わることはできない。
父から息子へと、雄の間だけで引き継がれていく間に、コピーミスが重なり、退化を続ける滅びの道へと入った。

同じ頃、もう1つ大事な遺伝子がY染色体を持つ男性の側に登場する。
それが胎盤を作るために不可欠な2つの遺伝子。
この瞬間、哺乳類の胎盤は男性がいなければできないという運命を背負ってしまった。

Y染色体が男性を決める役割を担ったことは哺乳類にとって死へのキスでした。もう後戻りはできなくなってしまったからです。でも、進化とはそのようなものです。得たものを最大限に活かしていくしかないのです」とグレーブス博士。


繁栄の対価としての滅亡


胎盤を作る遺伝子がなぜ男性側にあるのか?

それはまだわかっていない。
しかし、胎盤を得たことは哺乳類にとって大きなメリットなった。
その証は今の世界を見ればよくわかる。
寒いところから熱いところ、さらに海の中まで哺乳類はあらゆる環境に勢力を広げ、繁栄している。

ザトウクジラ
世界最大の哺乳類 クジラ


もちろん人間も例外ではない。
今の繁栄はY染色体の退化という時限爆弾と引き換えに成し遂げられたものなのだ。


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ここまでの感想


遅かれ早かれY染色体は消える。
Y染色体が消えてもすべての生物が絶滅するわけではない。
コモドオオトカゲのように雄なしでも子供を産める生物もいる。
ただ哺乳類は絶滅する側に入っている。

1億5,000万年前、恐竜が地上を支配していた頃、哺乳類は15cmほどの小動物で、常に捕食の危険にさらされていた。
そんな危険な時代を、胎盤によって子供を育てるというシステムによって生き抜くことができた。
現在、地球の至る所に生息して繁栄を極めているのもその恩恵。

だが、胎盤はY染色体がないと作られない。
つまり、Y染色体が滅べば、人類も滅ぶ。

一番の疑問は、「なぜ胎盤を作る遺伝子が、退化が決定づけられているY染色体に組み込まれているのか?」だ。
X染色体に組み込まれていれば、Y染色体が消滅しても人類という種は残る。
残念ながらこの一番知りたい疑問だけはわかっていない。

ただ退化・消滅が運命づけられているY染色体に胎盤を作る遺伝子が組み込まれているということは、人類を含む哺乳類という種は、滅びることも、その滅びる時期も、神によってプログラムされていたということなのだろう。

多種多様な生物が途方もない時間をかけて栄枯盛衰を繰り返す。
それこそが生命の大サイクルであるとするならば、染色体の劣化という形で存続期間を限定するという仕掛けも生命らしいと言える。

なにしろ哺乳類は生存と繁栄を得るために胎盤を獲得し、その対価として種の絶滅が約束された生命の1つで、生命全体から眺めれば希少な存在なのかもしれない。


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