金策冒険家エイジのblog

私は、私のままで、成功していける。金策冒険家エイジの思考と実践の、不定型な日常。
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理想の赤ちゃんを買う方法 - NHKスペシャル「女と男(3) 」を観て(6)

Saturday, 07, 2009 at 14:46
長い生命の歴史の中で、子孫を残す自然のメカニズムに手を加えるのはもちろん人間が初めて。
こうした技術の利用に対して行きすぎを懸念する国も出始めている。

赤ちゃん
この赤ちゃん、いくらなら買いますか?


イタリアでは2005年、生殖医療を規制する世界でもっとも厳しい法律が誕生した。
JUGEMテーマ:NHK

生殖医療技術を法律で規制するイタリア


法律では生殖医療はカップルだけに限られ、受精卵の冷凍保存や第3者からの精子や卵子の提供を受けることを禁止された。
いずれも日本などの先進国では法律による規制はないものばかり。

[イタリア 生殖医療に対する規制法]
  • 生殖医療はカップルに限る
  • 受精卵の冷凍保存禁止
  • 第3者からの精子や卵子の提供禁止


法律成立の背景には生殖医療に反対するバチカンの強い意向があった。
イタリアの人々に強い影響力を持つバチカンは、生殖医療が社会のもっとも基本となる家族を壊すと訴えた。

人類が脈々と受け継いできた男と女の人類学的な意味を変えてしまうすべての技術は決して許されません。人間は自らの限界を受け入れるべきです。人間がすべての欲求を満足させることができるなど、考えること自体間違っているのです」と説くローマ法王庁生命科学アカデミー所長エリオ・スグレッチャ神父。


精子バンクでシングルマザー


しかし、世界の現実はその先を歩み始めている。
カップルの不妊治療のために開発されたテクノロジーが、当初まったく想定されていなかった目的のために利用され始めている。

アメリカロサンゼルスに住むシェリー・ウオレスさん(♀)。
4年前、待望の女の子を出産した。

看護師をしているシェリーさんはシングルマザー。
そのシェリーさんが選んだ妊娠の方法は精子バンクを利用した体外受精だった。

結婚はしっくり来ないわ。小さい頃から人生を思い描くとき、いつも子供と二人という姿が浮かんだの。だから、精子バンクで子供を作ることはとても自然なことに思えたんです」とインタビューに答えるシェリーさん。


「理想の子供」の作り方


アメリカでは今、シェリーさんのように子作りに男性は必要ないと考える女性向けのビジネスが急成長している。

シェリーさんが利用したロサンゼルスにある精子バンク。
扱っている精子は全員有名大学出身者ばかり。
ホームページから外見(髪の色、目の色、肌の色、人種など)や性格、職業など、好みのドナーを自由に選ぶことができる。
また、お金を払えば、手書きの手紙や子供時代の写真、「こんにちは、ドナー11055です。身長は182cmあります」といった肉声まで手に入る。

男


カウンセリングでのやりとりは以下の通り。

一人で産むんですね」とカウンセラー。
はい
素敵! 最近多いんですよ。何をお求めですか?
好みの男性の写真を持ってきました」そう言ってカウンセラーにその写真を見せるブロンド女性。
かっこいい男ね!
ハンサムでしょ!
肉厚な唇、あごのラインもキリッとしていますね。そういう方を探しましょう。えくぼは興味ありますか?
えくぼもいいわね
了解
  :
  :


こうして条件に合う男性を絞り込んでいく。


こだわりの赤毛 頑固なところが玉に瑕


シェリーさんの場合、こだわりは髪の毛にあった。

とにかく赤毛にこだわったの。目の色よりね」と語るシェリーさん。
希望通り、父親の赤い髪の毛を受け継いだハーレーちゃん。
果たして、シェリーさんが当初思い描いていた通りの子供に育っているのか?

90点ね。90点。とても満足しているわ。また同じ方法で、もう一人欲しいんです」とシェリーさん。
残りの10点は?」との質問に、「彼女頑固なの。私にはそういうところはないので、頑固なところはきっと父親の遺伝子だと思うわ」と答える。


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だから、男と女はすれ違う―最新科学が解き明かす「性」の謎 NHKスペシャル 女と男 DVD-BOX NHKスペシャル 女と男 第3回 男が消える? 人類も消える? [DVD]




ここまでの感想


顕微授精開発者デブロイ博士は顕微授精を「人類にとって革命的な出来事」と言い、ローマ法王庁スグレッチャ神父は「人類学的な意味を変えてしまう」として「決して許されません」と言っている。

日進月歩で発達している生殖医療技術。
子供を強く望みながら、子宝に恵まれない夫婦にとっては希望の光となっている。
また、デンマークのように、人口を維持するために不可欠になっている国もある。
人類の延命手段としての利用価値は否定できない。

ただシェリーさんの事例を目の当たりにすると、いろいろと考えさせられる。


ネット通販でペットを買うように


子供はほしいが、夫はいらない」という女性にとって、精子バンクはまさにうってつけだ。
シェリーさんもその1人だろう。

金さえ払えば、優良で、好みの子供が手に入る。
まるでピザのトッピングを選ぶように(あるいは真・女神転生で悪魔合体させるときのように)子供を設計し、子供に気に入らない部分があれば、「このマッシュルームおいしくないわ。マイナス10点」とでも言うように、安易に相手ドナーのせいにする。

これは、ペットを買うときの感覚と同じではないのか?

直接ドナーと面会できない精子バンクを利用した場合、それはネット通販と大差ないように思えるが……。

もっとも懸念されるのは、ペット感覚で子供を購入した親が、自分の子供をしっかりした大人に育て上げることができるのか、という点だ。
中には立派に育て上げる親もいるだろうが、そうでない親はけっして多くないように思える。

あなたのお父さんはノーベル賞を取った優秀な学者なのよ!」と子供に過度のプレッシャーを与えるくらい普通にあるだろうし、「高い金出して優秀な遺伝子を買ったのに、なんでアンタは落ちこぼれなの!」と子供を叱りつけるバカ親もいるはずだ。
中には「赤毛の遺伝子を買ったのに赤毛にならなかった」という理由で育児放棄や虐待する親も、いないとは限らない。

こうしたことを考えると、やがて何らかの形で社会問題化していくことになると思われる。


そのとき、子供は何を思うのだろう?


出産から数年後、子供が社会性を備えたとき、自分の家に父親がいないことに気付く。
きっと母親に尋ねるだろう。
お父さん、なんでいないの?」と。
そのときは母親の説明を信じ、自らの境遇を受け入れるよりない。

母と娘


だが、赤ちゃんが生まれる原理を知る年齢に達したとき、ある子供は母親の嘘に気付く。
場合によっては傷付くことになる。

そして顕微授精や精子バンクのことが理解できる年齢に達したとき、母親からこう告げられる。

あなたの父親はドナー11055といって、身長182cmの人なの


そのとき、子供は何を思うのだろう?

その感情の波が去った後、子供はゆっくり悟るのだ。
この世に何人か、何十人か、何百人かわからないが、自分に異母兄弟がいるという可能性があることを。


欲望の追求は巨富と何をもたらすのか?


精子バンクについて調べてみた。

アメリカだけですでに100万人以上の子どもが、精子バンクの人工授精によって誕生しているらしい。

子供が欲しいという切なる願い。
そこに、夫はいらない、容姿の優れた子供が欲しい、頭の良い子供が欲しい、性格が良い子供が欲しい、男の子が欲しい、女の子が欲しい、健康な子供が欲しい、疾患のない子供が欲しい、自分では産みたくない(代理母に産ませたい)……、といった欲望が数珠つなぎにぶら下がる。

それら際限のない欲望を際限なく満たしていくことで、生殖産業は急成長してきた。
現在、アメリカには150以上もの精子バンクが存在し、その市場は年間約1億7,000万ドルに達すると言われている。

この現実に対して、「人類が脈々と受け継いできた男と女の人類学的な意味を変えてしまうすべての技術は決して許されません。人間は自らの限界を受け入れるべきです。人間がすべての欲求を満足させることができるなど、考えること自体間違っているのです」と説くローマ法王庁生命科学アカデミー所長エリオ・スグレッチャ神父の言葉はもはや時代遅れになっているのかもしれない。
だが、行き過ぎたアメリカ資本主義が見直される時が来れば、真っ先に思い出されるだろう。


参考図書


なお、精子バンクや生殖産業についてより深い理解が得られると思われる本を以下に紹介する。
一通りレビューを読んでみたが、精子バンクで誕生した子供の追跡調査、ドナーと母子の対面、生殖ビジネスの実態など赤裸々に描かれているようだ。

ベビー・ビジネス 生命を売買する新市場の実態 (HARVARD BUSINESS SCHOOL PRESS)
ベビー・ビジネス 生命を売買する新市場の実態 (HARVARD BUSINESS SCHOOL PRESS)椎野 淳 おすすめ平均
stars「日本」はこの問題をどう扱うべきなのか?
starsそれは許されることなのか、そうでないのか。読み終わっても自分なりの答えが出ない…
stars生殖医療の喜びと怖さ  医師より

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ジーニアス・ファクトリー
ジーニアス・ファクトリー酒井 泰介

おすすめ平均
stars日本の倫理観との違いを感じたstarsジーニアスのことをもっと知りたい
stars天才の子供は天才か
stars精子バンクが改めて浮き彫りにする家族のカタチ
stars家族に対する愛情とは何かを教えてくれる一冊

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ノーベル賞受賞者の精子バンク―天才の遺伝子は天才を生んだか (ハヤカワ文庫NF)
ノーベル賞受賞者の精子バンク―天才の遺伝子は天才を生んだか (ハヤカワ文庫NF)David Plotz 酒井 泰介

おすすめ平均
stars現実はもっとこわいことを知る本
starsアメリカだから”こんな”精子バンクが20年も存続できたのだろう

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危険から守り給えと祈るのではなく、危険と勇敢に立ち向かえますように。

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(ラビンドラナート・タゴール「果物採集」より 石川拓治訳)


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