金策冒険家エイジのblog

私は、私のままで、成功していける。金策冒険家エイジの思考と実践の、不定型な日常。
本や家電、ゲームのレビュー、日常を題材とした小説、メルマガほか。
<< 2019年08月 >>   1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31

『だから、男と女はすれ違う』レビュー(1)

Saturday, 11, 2009 at 20:16
だから、男と女はすれ違う―最新科学が解き明かす「性」の謎』を読んだ。
同書は2009年1月に放送されたNHKスペシャル『シリーズ 女と男 〜最新科学が読み解く性〜(全3回)』を単行本化したもの。

JUGEMテーマ:読書
当ブログで第1回「惹(ひ)かれあう二人 すれ違う二人」と第3回「男が消える? 人類も消える?」のレビューを書いたので、時間のある方はまずそちらを読んでもらいたい。

»NHKスペシャル「女と男」レビュー [目次]


放送された内容は2年半の取材のほんの一部でしかない


まず『だから、男と女はすれ違う』の全体を通した感想を一文で表すとこうなる。


放送された内容は2年半の取材のほんの一部でしかない



つまり、全3回、放送時間にして156分では収まりきらなかった情報がたくさんある。
放送には登場しなかった(放送ではカットされてしまった)研究者が本の中に何人も登場し、視聴者には伝えられなかった情報を提供している。
おそらくこの単行本の出版には、取材者が伝えたくても放送上の制約(時間や内容)のために泣く泣くカットせざるを得なかった情報を救済する意味合いもあったのだろう。

番組では「取材した内容」しか放送されなかった。
本では「取材した内容」だけでなく、「取材した側の情報」も記されている。

「女と男」について長年研究しているのも人間。
それを取材しているのも人間。
双方の視点や思考が読者に開示されているので、その情報(研究結果、研究者の見解、実際の現場など)について立体的に理解することが可能となっている。

たとえばこんな具合だ。

男女の恋愛の仕組みについて30年研究しているラトガーズ大学教授ヘレン・フィッシャー博士。
番組では博士の研究に参加を申し出た恋愛中のカップルサム(22)とジェシカ(19)が登場し、2人をMRI装置に入れ、恋人の画像と無関係の異性の画像を交互に見せて脳のどこが活動するかを測定する様子が放送されたが、どのような選考を経てサムとジェシカが選ばれたのか、についてはまったく言及されなかった。

[参考]
»恋とは何か? - NHKスペシャル「女と男(1) 」を観て(1)


本ではサムとジェシカが選考された過程についても詳しい説明がある。

まず大学構内に被験者をリクルートするチラシを貼り、「つい最近」と「激しい」という2つ条件を満たしているカップルを募集する。
集まった候補者の中からMRI装置に入れない人(ピアスや歯の矯正器具、ペースメーカーを入れている人、閉所恐怖症の人など)を除外する。
さらに左利きの人も除外される。
理由は、「脳の構造は「利き手」に左右されることがあるため、サンプルをできるかぎり標準化しておく必要があるため」とのこと。
最後にフィッシャー博士による聞き取り調査が行われる。

読者はサムとジェシカはこうした選考過程を経て、ようやく被験者となったことを知る。
と同時に、2人が左利きでもなければ、閉所恐怖症でもないという2人の周辺情報も知っている。

どうしてこんなにも入念に調べる必要があるのか?
もちろん本にはその説明もある。

MRI装置は本来医療現場で使用される。
研究で使用される場合、医療現場での患者の検査の合間を縫って利用しなくてはならない。
その上他の研究者からも使用申請は殺到しており、装置の使用料もバカにならないという裏事情もある。
MRI装置は高価で希少なため、本当に愛し合っているカップルと認められなければ使用できないという訳だ。


さらに、本では装置の中で行われているより詳しい情報も紹介されている。

放送では「二人をMRIに入れ、恋人の画像と無関係の異性の画像を交互に見せる。恋人の画像を見せたときにだけ反応する場所を探っていく。」としか説明されなかったが、実際はもっと複雑だ。

サムとジェシカは装置の中で「恋人の写真」、「4桁の数字」、「無関係な異性の写真」を30秒間にわたって交互に見せられる。
4桁の数字」はフィッシャー博士のグループが編み出した脳を一旦リセットするため工夫で、被験者は画面に現れる4桁の数字から7を引き算することを求められる。
この作業を課すことによって、「恋人の写真を見た後、無関係な異性の写真を見ているときも恋人のことを考え続けてしまう」という可能性を排除できる。

こうした背景は本を読んでいないとわからない。


『だから、男と女はすれ違う』の構成と語り口


だから、男と女はすれ違う』は4章構成。

[構成]
  1. 男と女は何が違う? なぜ違う?
  2. 惹かれ合う2人 - 恋する脳と身体のメカニズム
  3. すれ違う2人 - 恋の賞味期限と男女の未来
  4. 男が消える? そして人類も消える?



語り口は平易軽妙で、すらすら読める。
読めてしまう、というべきか。

番組では離婚や精子の減少、人類滅亡など深刻な内容が重々しく語られ、そうした重々しさを筧利夫と西田尚美の挿入ドラマが緩和するという構成になっていた。
本では取材者よる生の語り口そのものが、内容の深刻さをライトな感じにしている印象を受けた。
すらすら読めてしまうので、ややもすると、そのまま記憶に定着せず情報がスルーしてしまう嫌いがあると読了直後に感じた。

言い換えると「一度読めばいいや」と早計に判断してしまいそうになる(というか、私はなった)。

それを避けるためにも、放送と本は交互に、あるいは同時進行でインプットした方がいいなと思った。


放送と本、2つセットで


本を読んだ後に放送を再視聴すると、放送内容以上の予備知識が備わっているため、「女と男」についてより包括的な理解を得ることができる。
「だからこんな撮り方(画像)なのか!」と膝を打つ場面も散見する。

映像と活字。
この2つは相互に補完する関係で、表裏一体。
2つセットで視る/読むことによって取材者の意を十全に汲み取ることができるようになっている。

取材者側にとっても、「できればこの2つをセットで視て/読んでもらいたい」というのが本心だろう。

NHKスペシャル『シリーズ 女と男 〜最新科学が読み解く性〜』を視て、「番組内容をより深く理解したい」、あるいは「放送された内容だけではもの足りない」と感じている人にとってはそのコアな欲求を満たしてくれる内容を含んでいる。
そうした読者は未知の情報に触れる度、読書の愉悦に浸れるだろう。

巻末には参考文献が16冊紹介されているので、更なる深みにはまりたい人はそれらに手を伸ばせばいい。

そこまでの興味はない人でもテーマは男女。
本書のはじめにの中で「会話で盛り上がるうんちくも、ぎっしり詰まっていると自負している」とあるように、人に話したくなるネタは満載。
一読の価値はあると思う。


[単行本とDVD]
だから、男と女はすれ違う―最新科学が解き明かす「性」の謎 NHKスペシャル 女と男 DVD-BOX



[補足]
NHKスペシャル『シリーズ 女と男 〜最新科学が読み解く性〜』を見逃した方、2009年4月24日に、DVD「NHKスペシャル 女と男 DVD-BOX」が発売されます。


[関連記事]
»NHKスペシャル「女と男」レビュー [目次]


[記事の評価をお願いします!]

素晴らしい すごい とても良い 良い

コメント
name:
email:
url:
comments:

トラックバック
trackback url:
1つ前の記事「『だから、男と女はすれ違う』レビュー(1)」では、NHKスペシャル『シリーズ 女と男 〜最新科学が読み解く性〜(全3回)(放送)』と『だから、男と女はすれ違う―最新科学が解き明かす「性」の謎(単行本)』は互いに補完し合う関係にあり、「女と男」にまつ
金策冒険家エイジのblog | Tuesday, 14, 2009 at 18:25
『だから、男と女はすれ違う―最新科学が解き明かす「性」の謎』の巻末に16冊の参考文献がリストアップされている。 この記事ではそれらを一覧にして紹介する。 JUGEMテーマ:読書
金策冒険家エイジのblog | Wednesday, 15, 2009 at 19:17
2009年1月に放送された「NHKスペシャル シリーズ女と男 最新科学が読み解く性(全3回)」のレビュー。 番組の内容と視聴した感想、そのとき考えた(考えさせられた)ことなど。 第1回 惹(ひ)かれあう二人 すれ違う二人 第2回 何が違う? なぜ違う? 第3回 男が消
金策冒険家エイジのblog | Wednesday, 15, 2009 at 19:22
録画してあった2009年5月2日(土)放送の「土曜プレミアム『緊急特番 サイエンスミステリー7 それは運命か奇跡か!?〜DNAが解き明かす人間の真実と愛〜』」を観た。 番組は第一章「父が女になっていく」、第二章「遺伝子と愛と離婚のミステリー」、第三章「短い命を刻
金策冒険家エイジのblog | Tuesday, 12, 2009 at 19:25
常に心に留めておきたい詩
危険から守り給えと祈るのではなく、危険と勇敢に立ち向かえますように。

痛みが鎮まることを乞うのではなく、痛みに打ち克つ心を乞えますように。

人生という戦場で味方をさがすのではなく、自分自身の力を見いだせますように。

不安と恐れの下で救済を切望するのではなく、自由を勝ち取るために耐える心を願えますように。

成功の中にのみあなたの恵みを感じるような卑怯者ではなく、失意のときこそ、あなたの御手に握られていることに気づけますように。

(ラビンドラナート・タゴール「果物採集」より 石川拓治訳)


奇跡のリンゴ 「絶対不可能」を覆した農家 木村秋則の記録
(この本の中の一節です)
amazon.co.jp サーチ




with Ajax Amazon




ページトップへ