金策冒険家エイジのblog

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女は理想の男を嗅ぎ分ける -『だから、男と女はすれ違う』レビュー(2)

Tuesday, 14, 2009 at 18:21
1つ前の記事「『だから、男と女はすれ違う』レビュー(1)」では、NHKスペシャル『シリーズ 女と男 〜最新科学が読み解く性〜(全3回)(放送)』と『だから、男と女はすれ違う―最新科学が解き明かす「性」の謎(単行本)』は互いに補完し合う関係にあり、「女と男」にまつわる謎や現在における科学的研究成果を包括的に理解するには2つセットで視る/読むした方がいいということを述べた。

この記事では放送と本2つセットで視る/読むした場合、どのくらい理解が広がるかについて具体例を出して、その手応えを表現してみたい。
テーマは記事タイトルにもあるように「女は理想の男を嗅ぎ分ける」について。

JUGEMテーマ:読書

まずはおさらいから


ここから下はNHKスペシャル『シリーズ 女と男 〜最新科学が読み解く性〜』の「第1回 惹(ひ)かれあう二人 すれ違う二人」の内容がおおよそ頭に入っていることを前提に進める。
未視聴の方は以下のレビューを。

[関連記事]
»第1回 惹(ひ)かれあう二人 すれ違う二人 レビュー


理想の相手が描いてあるラブマップ(=恋の地図)


すでに見てきたように、恋愛とは自分の子孫をより確実に残していくために獲得されたシステムで、具体的には「この人!」と決めた相手との間に赤ちゃんを作り、その赤ちゃんの世話が一段落するまでの間、パートナーとの絆を維持するよう働く。

放送ではパートナーを選ぶとき、男性は視覚を働かせて女性の腰のくびれに着目し、女性は記憶を働かせて男性の誠実さを確かめることが紹介された。
ただ男性はパートナーを選ぶ際、女性の腰のくびれだけで判断しているわけではないし、女性も男性の誠実さだけで決めているわけではない。

単行本『だから、男と女はすれ違う』では「ラブマップ」という概念が紹介されている。
以下、その部分を引用する。

では、私たち人間はどんな基準で選り好みをしているのか。フィッシャー博士に尋ねたところ、ラブマップ(=恋の地図)が重要だという。
ラブマップとは、生まれた直後から現在に至るまでの間に、無意識の内に築き上げてきた嗜好や性格に関する膨大なリストである。両親の言葉づかいやユーモアのセンス、洋服の好みや政党の好み、兄弟の好き嫌いや趣味、友人や先生の価値観、テレビで見聞きしたこと……。こうした子供時代から思春期にかけて溜め込んだ経験が恋愛対象となる人物像を決めているというのだ。
(『だから、男と女はすれ違う―最新科学が解き明かす「性」の謎』p.85〜86より、太字はママ)



フィッシャー博士によれば、ラブマップは10代の間に完成し、その地図の理想像と重なる人物が現れると、恋のスイッチが入るとのこと。

実際、社会・経済的背景、人種、年齢、知性や教育水準、ルックスのレベルで、それぞれ釣り合いの取れた相手を選ぶ傾向があることが複数の調査から明らかになっている。

なるほど。

言われてみればその通りで、容姿に固執する男性は多いし、年収にしか興味を示さない女性も少なくない。


女は男の免疫型を嗅ぎ分ける


ラブマップは心理学的なアプローチだが、科学的なアプローチも『だから、男と女はすれ違う』には紹介されている。
これが実に興味深い。
女性がパートナーを選ぶ際、男性のニオイを嗅ぎ分けている、というのだ。

1995年、スイス・ベルン大学のクラウス・ウェデンキンド博士が、「Tシャツ実験」の結果をもとに論文を発表した。
実験内容は次の通り。

[Tシャツ実験の内容]
  1. 実験前に、実験に参加する学生の免疫型(HLA)を調べておく
  2. 44人の男子学生にTシャツを2日間着用し続けてもらう
  3. 汗や体臭がしみ込んだ男子学生のシャツを49人の女子学生に嗅いでもらい好みのニオイを選んでもらう


実験の結果、以下のことがわかった。

自分と免疫型が似ていない男子学生のTシャツは「いい匂い」だと感じ、免疫型が自分と似ている人のTシャツは「嫌な臭い」と感じる傾向がある。


HLAは白血球の血液型


HLA(Human Leukocyte Antigen、ヒト白血球型抗原)とは白血球の血液型で、赤血球(主にABO、Rh±の血液型)と異なり、その種類は数万種類に及ぶ。

ウェデンキンド博士らはHLAの型の内、HLA-A座、HLA-B座、HLA-DR座の3つの遺伝子座(他にHLA-C座、HLA-DQ座、HLA-DP座がある)を事前に調べておいた。
HLA-A座は60の型、HLA-B座は150の型、HLA-DR座は180の型が知られている。

HLA型は人種や民族によって偏りがあり、同人種、同民族間では似たような型の人と出会う確率が高くなる。
ちなみに日本人に最も多いHLA型はA24-B52-DR15で、約9%がこの型を持っているとのこと。


娘が父親のニオイを異常に嫌う理由


女性は自分とHLA型が似ていない男性のニオイを「いい匂い」と感じ、自分とHLA型が似ている男性のニオイを「嫌な臭い」と感じる。


これはどういうことなのか?


この結果は、生物学的に見ても納得度の高いものだった。HLAが違うもの同士が子どもをつくったほうが、HLA型の多様性が増すために、病気に対する高い抵抗力を獲得する可能性があるからだ。逆にHLA型の一致度の高い男女が子どもをつくった場合、その子に伝えられるHLA型は限定され、その結果、免疫機能は相対的に弱まると考えられる。事実、HLA型の一致度が高い夫婦ほど流産する可能性が高いということが指摘されている。
(『だから、男と女はすれ違う―最新科学が解き明かす「性」の謎』p.90より)



つまり、女性が「いい匂い」の男性をパートナーに選ぶと、生存率の高い子供が生まれやすい。
というより、生存率の高い子供が生まれやすい男性のニオイを「いい匂い」と感じるよう進化した。

娘が父親のニオイを異常に嫌うのはこうしたことが原因なのかもしれない。


ハッタライトのHLA型を調査


1997年、さらに興味深い実験結果が発表された。
シカゴ大学精神生物研究所創設者で、ヒト・フェロモン研究の第一人者マーサ・マクリントック博士。
マクリントック博士は同僚のキャロル・オーバー博士とともに「ハッタライト」のHLA型を調査した。

「ハッタライト」とは1870年代にアメリカに渡ってきたキリスト教の一派で、財産を共有し、自給自足の、世俗とは隔絶した共同生活を送っている集団のこと。
現在460の集落でおよそ46,000人のハッタライトがいる。
ハッタライトは部外者とは結婚せず、同じハッタライト同士とのみ結婚する。

もともとアメリカに渡ってきた約400人という限定された環境下で婚姻が繰り返されるため、近縁なカップルが世代ごとに増加していく。
そうした血の濃い集団の中で、HLA型はどのような働きをするのか?

マクリントック博士とオーバー博士は1つの集落、411のカップルを対象に血液検査を行い、HLA型を特定した。
幸いハッタライトは信頼性の高い家系図を持っているので、家系図を見れば遺伝的な近縁関係がわかる。

血の濃い集団内で結婚するわけだから、ハッタライトの夫婦のHLA型が一致する確率は他に比べて桁違いに高くなるはず。
しかし、調査の結果、HLA型が異なる男女が惹かれ合い、結婚する傾向が顕著に表れた
つまり、極めて狭い選択肢の中から、なるべくHLA型の異なる相手(=生存率の高い子供が生まれる可能性の高い相手)を選んでいたのだ!


ハッタライトへのTシャツ実験


この結果を受け、さらに興味深い実験が追加された。
ハッタライトの女性に「Tシャツ実験」を行い、ハッタライトではない部外者の男性のTシャツのニオイを嗅いでもらったのだ。

その結果、HLA型にまったく共通するものがない男性のニオイよりも、1つか2つ型が一致する男性のニオイに女性が好感を持つ傾向が出た。

結果を総合すると、こうなる。

女性はHLAの型が完全に一致する人は避ける一方、まったく一致しない人も避ける。


その理由についてマクリントック博士は次のように語る。

「近親相姦を避けるという意味でもあまりにも遺伝的に似ている人は避けようとするのだと思います。ただ一方で、あまりにもかけ離れている遺伝子もリスクが高いといえます。たとえば、ヒマラヤの高地に住んでいる人を考えて下さい。酸欠の状態に慣れていますよね。もしそこに海抜0メートルの人が嫁いだとすると、かなりつらいですよね。もしその夫婦が子どもをつくったとしたら、当然、酸欠に慣れた人同士に生まれた子どもよりも生き残る確率は低くなります。だからあまりにも遺伝子がかけ離れている相手も避けようとするのです」
(『だから、男と女はすれ違う―最新科学が解き明かす「性」の謎』p.94より)



『だから、男と女はすれ違う』を読むメリット


こうしてみると、女性の鼻は極めて正確に、遺伝的に理想の男性を嗅ぎ分ける能力があることがわかる。

女性にとって男性のニオイはパートナーを選ぶ際の重要ファクターであることが最新の科学研究によって証明されたわけだが、残念ながら放送ではこの部分が丸々カットされていた。
だから、男と女はすれ違う』を読んでいない視聴者は、女性は記憶を働かせて男性の誠実さを確かめることでパートナーを選ぶという一面的な理解で次へ進むが、単行本の読者であれば、女性は記憶力を働かせるだけでなくラブマップに照らし合わせ、HLA型(好きなニオイ)を確かめて理想の相手を選んでいるというより深い理解を得ることができる。

この記事でピックアップしたのは女性がパートナーをどのように選んでいるか、という部分だけで、放送ではほんの数分のパートに過ぎないが、これだけの紹介されていない情報がある(本当はもっと)。


放送された内容は2年半の取材のほんの一部でしかない



1つ前の記事「『だから、男と女はすれ違う』レビュー(1)」で述べた本の感想だが、上記以外にも放送では紹介されなかった様々な調査結果や実験結果がいくつも掲載されている。
興味のある人は、読んで損はないと思う。


[単行本とDVD]
だから、男と女はすれ違う―最新科学が解き明かす「性」の謎 NHKスペシャル 女と男 DVD-BOX



[補足]
NHKスペシャル『シリーズ 女と男 〜最新科学が読み解く性〜』を見逃した方、2009年4月24日に、DVD「NHKスペシャル 女と男 DVD-BOX」が発売されます。


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金策冒険家エイジのblog | Wednesday, 15, 2009 at 19:17
2009年1月に放送された「NHKスペシャル シリーズ女と男 最新科学が読み解く性(全3回)」のレビュー。 番組の内容と視聴した感想、そのとき考えた(考えさせられた)ことなど。 第1回 惹(ひ)かれあう二人 すれ違う二人 第2回 何が違う? なぜ違う? 第3回 男が消
金策冒険家エイジのblog | Wednesday, 15, 2009 at 19:22
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金策冒険家エイジのblog | Tuesday, 12, 2009 at 19:25
常に心に留めておきたい詩
危険から守り給えと祈るのではなく、危険と勇敢に立ち向かえますように。

痛みが鎮まることを乞うのではなく、痛みに打ち克つ心を乞えますように。

人生という戦場で味方をさがすのではなく、自分自身の力を見いだせますように。

不安と恐れの下で救済を切望するのではなく、自由を勝ち取るために耐える心を願えますように。

成功の中にのみあなたの恵みを感じるような卑怯者ではなく、失意のときこそ、あなたの御手に握られていることに気づけますように。

(ラビンドラナート・タゴール「果物採集」より 石川拓治訳)


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